菱山南帆子講演会「平和憲法が生かされる社会へ」(要旨)
文責 齋藤正德
皆さんこんにちは。「許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局長」の菱山南帆子です。
今日は「明日も頑張ろう」という気持ちになれるような話をしたいと思います。
3年ぶりに韓国の友達と行き会った。友人は気が付くと「ソウル市の水曜デモや集会は禁止にされていた。右派が私たちの場所をいつの間にか占拠してしまった。」と話してくれました。
この話は「権利は一度手放したら、もう一度手に入れるには大変な困難が伴う」ことを教えています。
岸田文雄政権は国会閉会後に安保3文書を閣議決定し、軍事費を増やし軍拡を進めながら、改憲の機運を高めようとしています。
若者は戦争になったら「俺はいかねえ」と言っている一方、若者の間に「夫婦2人、月13万円で暮らすおしゃれな暮らし」といった「節約コンテンツ」がはやっている。
自衛隊員募集のスタイルも変わった。「〇〇基地に行けば、握り飯が食べられる。」日々食べるものがあれば、人はそれでよしとするのだろうか。
国は空襲警報を「Jアラート」に、防空壕を「地下シェルター」に言葉を変えて若者を取り込んでいこうとしている。「戦争する国へのパズルのピース」はすべてと言っていいくらいハマってきている。
安倍元首相「国葬」強行から始まった岸田政権の暴走だが、最初は「しかたないのでは」の声が多かった。やがて反対が70%に増えた。市民の運動が世論を動かした。
立憲民主の泉代表も「僕は国葬に出る」と言っていたが、全員出ないことになった。皆さんはもっと自信を持った方がいい。
本当に杉尾さんたちがいてくれてよかった。長野の皆さんの力はすごいと思う。
衆議院の憲法審査会で自公と維新・国民は改憲案を出してきた。
傍聴して見ているとよくわかる。自民党議員席はふだんいつも空席だ。特に井出庸生議員がひどい。出席してもスマホの動画サイトばかり見ている。参議院の古川自民党議員は弁護士資格があるというが、「司法試験以来、私は憲法条文を使ったためしがない」とうそぶいている。
2017年にJアラートが始まった。私が住んでいる八王子市は萩生田氏のおひざ元だが、町内会でバケツリレーや白タオル運動が行われた。まるで戦時下の防空演習と変わらない状況だ。タモリのいう「新しい戦前」は目の前に来ている。
自民党系のある自治会長は森友学園問題を次のように話している。「籠池は嘘つきでペテン師。安倍元首相は騙された。赤木さんは死ぬことはなかった。ただ文書をちょっと変えただけの話だ。」
右派が握る自治会は戦前・戦中から今につながっている。
自公や維新には絶対できないことが2つある。それは「ジェンダー平等社会の実現」と「命と暮らしを守る政治」だ。日本は就職や入試など女性差別がまかり通っている国だ。
男女平等ランキングが146カ国で125位。どれほどやばいかわかる。国会の女性議員の比率は10%もない稀有な国だ。都議会議員選挙で自民党女性議員の丸川さんはこう叫んだという。「皆さんの力で私を男にしてやってください。」
立憲野党にもまだジェンダーギャップはある。差別は解消した方がよい。私たちは変わることができる。2020年12月、路上生活の女性が男に殴られて死亡した。彼女は夫からDVを受けて、非正規暮らしであった。コロナ禍で首を切られホームレスになった。所持金は8円しかなかった。彼女に一体どんな罪があったというのか。地元で相談会を開くと女性たちは子どもを連れてくる。「助けて欲しい」とは言わない。ただ夜の分のおにぎりが欲しいという。こうした貧困と格差から目をそらし、政府は高価なミサイルを買って平気でいる。
若者たちはなぜ怒らないのか。立ち上がらないのか。
キーワードは非正規、引きこもり、自己責任。自助、共助、絆で「国を守る」と嘘をつく菅ポスター。
「みんなと違う」を極度に恐れる若者たち。公務員になりたくてもなれない。正規で働けない。労働組合を知らない。労働者意識が薄弱な若者たち。
ホリエモン、ひろゆき、IT系の六本木が大好きな人たち。自分より下に敵をつくろうとしている。だから生活保護はずるい。在日外国人(特権)はずるい。障碍者・女性はずるい。女性にはレディースデイがあるからずるい。男の方が労災多い。俺たちはじっと我慢しているのにお前たちはずるい。権利意識が奪われた心のねじれで本気で彼らは怒っている。
ネット上にグレタ・トンベリは「拘束されたにもかかわらず偉そうに胸をはっていた。」という誹謗中傷が殺到した。1989年のゆとり世代はいい子たちが多い。だけど人に迷惑をかけてはいけない。声を上げれば潰される不安を抱えている。Z世代は生まれたときからスマホや動画を見て育っている。だから耳で聞く例えば野球のラジオ中継が分からない。彼らは動画を見ないと理解しない。
人とのつながりを分断された砂のような社会に、今の若者は生きている。
彼らはこの世の奇麗なものしか見たがらない。私たち市民運動の街頭宣伝にも耳を塞ぎ、目をつぶる。新自由主義の限界が来ている。
今の市民運動ははっきり言って「ガリ版と鉄筆の世代」が支えている。
運動を支え励ました大江健三郎さん、坂本龍一さんも亡くなった。どうか皆さん、あと500年生きて欲しい。(笑い)
市民運動こそが社会を動かすキーポイントだ。上から目線、悲壮感で人を動かすのを止めよう。
共感と傾聴の姿勢が運動を広げるコツ、明るく楽しくやりましょう。
楽しんでいる姿を見せることで、若者が自然によってくるような活動を工夫する。例えば「大道芸」で「戦争のつくり方」の紙芝居をやり、人々が足を止める工夫をする。仮面をつけた寸劇をするのもよい。
高尾山のケーブルカー降り場で署名を並べて、観光客の足を止めるなど。シール投票も有効。
「敵基地攻撃能力保有」に99%反対のシールが貼られ、可視化できた。先制攻撃で「先にやるのはまずいでしょ」などの反応が返ってくる。
「明るく楽しく、分かりやすい市民運動にアップデート」すべきだ。
潮が満ちてきたのが2015年。潮は引く時の力の方が大きい。今までの市民運動史にもっと自信を!
成功体験はたくさんあった!だから76年間憲法を変えさせなかった。私たちは勝利してきた。
安心して声を上げられる社会にするために私たち大人ができることは?
街なかに出て、自信をもって明るく訴えること。楽しくて分かりやすいことは悪いことではない。
改憲を許さない世論を一緒につくっていきましょう。
(大きな拍手)